柳原法やHouse-brackmann法の評価法
障害の程度や予後判定を判定する上で実施される検査には、顔面神経研究班による評価スケール、House-brackmann法の評価スケール、ENoG、神経興奮性試験、誘発筋電図、瞬目反射等の評価方法があげられます。
顔面神経研究班による40点法
臨床家の間で広く汎用されている方法です。House-brackmann法の評価スケールと同様、簡易的方法であり、正しい評価測定には評価者のある程度の経験が必要です。
微妙な変化を表現するには不十分な場合も確かです。
合計麻痺スコアーが38点以上で正常、8点未満で完全麻痺とします。8点未満であっても、早期に回復傾向を示せば完全治癒する確率を期待できるのです。
ほぼ正常 (4点) | 部分麻痺 (2点) | 高度麻痺 (0点) | |
---|---|---|---|
安静時非対称 | 4点 | 2点 | 0点 |
額のシワ寄せ | 4点 | 2点 | 0点 |
軽い閉目 | 4点 | 2点 | 0点 |
強い閉目 | 4点 | 2点 | 0点 |
片目つむり | 4点 | 2点 | 0点 |
鼻翼を動かす | 4点 | 2点 | 0点 |
頬をふくらます | 4点 | 2点 | 0点 |
イーと歯をみせる | 4点 | 2点 | 0点 |
口笛を吹く | 4点 | 2点 | 0点 |
口をへの字にまげる | 4点 | 2点 | 0点 |
House-brackmann法の評価スケール
麻痺グレード | 顔面神経麻痺 | 症状 |
---|---|---|
Ⅰ | 正常 | 正常 |
Ⅱ | 軽症の麻痺 | 安静時正常・動作時に軽い非対称有 |
Ⅲ | 中度の麻痺 | 閉眼は可能であるが、非対称有・軽度の共同運動有 |
Ⅳ | やや強い麻痺 | 閉眼は不可能、明らかな非対称・共同運動有 |
Ⅴ | 強い麻痺 | 動きは軽度しか見られない、明らかな非対称 |
Ⅵ | 完全麻痺 | 動きが全く見られない |
ENoG:顔面神経伝導検査
神経変性を定量的に評価できる検査であります。
発症後約1週間前後に測定し顔面神経麻痺の後遺症の判定に用いられます。
顔面神経出口付近(耳下部)で顔面神経を刺激して、表面電極から口輪筋(口を動かす筋肉)の活動電位を記録します
健側の反応と比較して予後の判定を行います。
この比率が40%より高いか低いかが今後の経過の重要なポイントとなります。
この数値が40%より高いと3ヶ月以内に治り、後遺症も残らない可能性が高いと考えられます。
この最低値が10%以下の場合は治癒は遅延し0%だと完全治癒は困難であるとされます。
NET:神経興奮性検査
これは顔面神経が生きているかどうが確認する検査です。
顔面神経を電気刺激して、徐々に刺激強度を上げていき肉眼で筋収縮が発生する 最小の閾値を求め健側と比較し、この値が3.5mA以上では予後がよくないとされます。
誘発筋電図
顔面神経麻痺に対して従来から行われて いる検査には誘発筋電図 があります。これは顔面神経刺激により誘発さ れた筋電図の振幅を測定する検査であります。
しかし、この検査では発症直後の診断を下す ことは困難で、発症より1 週間前後に実施されます。
一方,、被験者の自発的な顔面筋収縮の積分値を測 定する方法が積分筋電図(筋電図の電位を時間積分した値)は発症直後より測定可能で有用との見解もあります。
瞬目反射
目の上から出る眼窩上神経(三叉神経第一枝)を電気刺激して、電極を両側眼輪筋(目の外側へ基準電極と導出電極をはり、刺激側の眼輪筋よりR1が記録されます。
R2は両側性です。幹側の刺激ではR1及びR2とも遅延し、対側の刺激では患側のR2が遅延する。発症後2~3週間経過してもR1が誘発されない症例では予後はよくないとされます。
末梢性顔面神経麻痺は顔面神経管内での浮腫および炎症と考えられているため、茎乳突孔より末梢で行う電気生理学的検査よりも、客観的評価に優れているとの見解もあります。