顔面に生じる発作性の激しい痛みで、顔面神経麻痺のように、表情を作る筋肉が侵されるのではなく、同じ顔面を支配する回路でも 顔面頭部の感覚を主に伝える三枝ある枝の何れかまたは複数が侵される病気が三叉神経を介する痛みです。

多くは原因不明と考えられる特発的に起こるものと、原因疾患が明らかな症候性のものとに区分できます。

血管の走行異常などで起こる特発性である神経痛の主要因

これまで原因不明と考えられてきた本症でも、七割は走行異常の血管や動脈硬化性病変を持つ 血管による神経の圧迫が誘因であることがわかっています。

血管による圧迫の長期化で、髄鞘の脱落した神経線維部位に非シナプス性の接合が生じ、末梢から電気信号が 接合部を介して隣接する線維に波及し、電気信号が増幅する結果、痛みを起すのではないかと考えられています。

もう一つの説が、末梢からの異常な電気信号が脊髄路核のニューロンに変調をきたすことで起こるのでは ないかとも考えられています。

腫瘍や帯状疱疹などで起こる症候性の神経痛について

主な原因は腫瘍や動脈瘤などがあげられ、特発性との違いは、感覚異常や脳神経障害による症状を伴うことであります。

脳腫瘍による発症は約5%と考えられていますが、もっと高いとの報告もあります。

脳腫瘍によるものは、若年層に多く、角膜反射が低下もしくは消失する例が多いとされています。

帯状疱疹ヘルペスは、末梢感覚支配領域に水泡と疼痛をきたすことがよくしられている疾患です。

帯状疱疹ヘルペスは高齢者に多く、第一枝に好発します。

帯状疱疹では、痛みが酷く発疹消失後も痛みは持続することが多いため、発疹出現後は即座にアシクロビルや バラシクロビルなどの抗ウイルス薬の投与が大切であります。

多発性硬化症では、脳幹部を障害するため、両側性の神経痛が現れる事が多く、通常は脳神経症状後に痛みが出現 する事が多いと考えられています。

症状と診断

主に40歳以降に発症し、男女比は、1:1.5~2とやや女性に多く、人口10万に4~5人と言はれている。

発症部位は第二枝、第三枝の順に多く痛みは突然起こり数秒から数分持続する。

頻度は日に数回から、1ヶ月に2~3回の例まである。

痛みの性質は鋭利な刃物で刺されたような感じや、焼けるような激痛を覚える例が多いことが知られています。

痛みを感じる部位では、鼻の外側・上口唇・下口唇および歯肉などに多い。

水で洗顔したり、食物を咀嚼したりする事が誘発刺激になる。

このため、患者さんは、洗面や食事に恐怖心を抱くことが多くなると考えられ、実際に発作の発現に恐怖を抱く方が 多いとされます。

しかし、顔面の感覚障害は伴うことはなく、感覚異常を生じている例では他疾患(腫瘍・多発性硬化症)などの症候性が疑われます。

診断はMRI・MRAなど血管造影が用いられます。

現在では画像診断の精度向上で神経圧迫の評価に有用と考えられます。

保存療法や手術に鍼灸

主な薬物療法としては、異常な電気信号の発火と考えられることからも抗痙攣薬が用いられ、約70パーセント の患者さんには有効であるとされています。

神経ブロック療法は、薬物療法の無効例や副作用例に使用され、感覚異常を出来るだけ出現させないように、 眼窩下神経や眼窩上神経などの末梢枝から行う。

アルコールブロックでは、1年程度有効であるとされ、半月神経節に対するブロックではほぼ永久的に有効であると 考えられています。

神経血管減圧術では、後頭頭蓋を開頭し、圧迫血管と神経の間にスポンゼルや筋肉片を挿入するもので、治癒率は 90%程度とされますが、聴力低下などの後遺症が残る例もあります。

現在では、高周波熱凝固療法が行われたり、ガンマナイフ治療も広く実施されています。

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