後遺症にはワニの涙や病的共同運動。顔面拘縮・不完全治癒など

末梢性顔面神経麻痺の完全回復率は70%以上であり、予後良好な場合が多いのですが不完全回復で顔面神経麻痺の後遺症残す場合もあるのです。

高度(完全麻痺例)で発症より約一ヶ月以上経過しても改善の傾向が見られない例や、耳以外の疼痛を伴う(ラムゼーハント症候群)、涙分泌異常を伴うなどの例においては予後が悪いと言うれてますが、個人差があり一概には後遺症を評価できません。

ベルll麻痺で程度が軽症で約1~3週間以内に回復の兆しが見られる症例では、はぼ完全回復を期待でき、回復の程度は約1ヶ月くらいかけて回復していく場合と2~3ヶ月くらいかけてゆっくり回復していく場合や半年くらかけて徐々に回復していく場合もあるのです。

電気生理学検査等にて大まかな予後は判定可能であるのですが、長期化が予測される場合においては神経損傷程度・年齢など個人差もあり正確に予後(どの程度の後遺症が残存するかなど)を判定するの困難な場合も。

初期の評価方法(スコア)が低い程予後は芳しくない場合が多いのです。

長期化する例では、麻酔科・リハビリ科・鍼灸治療・整体・マッサージ手技漢方薬治療などを併用される場合が多いのですが、その治療自体が長期化する事や、期待通りに回復がえられないなど、中断や脱落される方も多く、その後の後遺症の経過自体把握仕切れていないのも現状であります。

代表的症状は病的共同運動・不完全治癒・顔面拘縮・顔面痙攣・ワニの目など

不完全治癒

一見正常に見えても、笑ったり泣いたり、怒ったりした時に顔面の非対称が明らかになります。口角が上がらなかったり、口笛をふけなかったりと 、その程度に差はありますが後遺症が残存します。

顔面拘縮

顔面筋の拘縮により鼻唇溝が深くなったり、眉が下がっていたり、口角が下がったり。特に口角付近は後遺症が残りやすい部位とであるので、重症後遺症の場合などはマッサージ等の予防が大切です。

顔面痙攣

顔面神経麻痺発症後、半年から2年後に起こる顔面筋の痙攣(けいれん)であり、自分の意思とは関係なく眼や口の周りの筋肉がピクピク動いたりしますが、後遺症の程度は軽いとされています。

ワニの涙症候群

食事のときに涙が出る現象。「ワニの涙」とは、ワニが捕食をするときに涙を流すことに由来されています。詳しい原因は不明ですが、神経再生時における過誤により唾液分泌腺と同時に涙腺分泌などの後遺症が起こると考えられてます。

煩わしい病的共同運動

麻痺後に残存する最も重大で高度の後遺症です。この後遺症が出現すると根本的な治療方法がないとされておりますので、予防顔面マッサージ・バイオフィードバック等のリハビリ)が重要です。

顔面神経の神経障害は髄鞘損傷・軸索損傷・神経断裂の三つにわける事が出来ます。髄鞘損傷が最も軽症とされ神経線維は変性をきたさずに、病的共同運動などの後遺症を残さず治癒するため、リハビリ等も不要とされ、逆に最も重症なのが神経断裂であります。

その中間が軸索損傷です、軸索損傷をきたせば末梢まで変性し(waller変性(注1))、神経が再生されるまで 長期間要し、顔面神経麻痺の回復も同様の結果を生じます。

神経再生は中枢側より始まりますが、その際に再生すべきでない部位にも軸索が再生(過誤支配)され、 その結果病的共同運動が生じます。

その為に、眼を閉じようとすると口角が引っ張られたり、口を動かすと目も閉じてしまうなどの後遺症がでます。

神経断裂の状態

(注1)神経線維と神経細胞体との間を切断すると、通常切断部より末端に向かって変性を起こしてきます、これをwallerの変性と言います。

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